2022/09/27

読書感想文・1 『コンビニ人間』村田沙耶香

 『コンビニ人間』、読んだ

おもしろかったですね、風刺的というには上品で、問題提起というにはさらりとした手触り

いろいろなところで聞いていた「ダメ男」のダメ方向が予想外でわらったけども、このお話にぴったりでした

けっこう前に借りたのに、けっきょくぎりぎりまで読まなかった……けど、さくっと二時間くらいで読める作品だとおもいます 文章もすごぶる読みやすい

おもったことをつらつらと書くと、

・妹、ひでえ

・98年に大学一年、でお話は三十六歳のとき ということは刊行された2016年時点でのお話として描かれているけども、六年前ならさすがにもうちょっと周囲に理解があるとおもうし、全体的に描かれている状況が設定より十数年くらい古いかんじがした でもそれによってこの小説の力が損なわれるとはおもわない

・純文登竜門としていいかもねえ

・縄文時代ウケた こんな男世の中にいそう ダメンズっていろんな種類があるんだなあ(こなみ)

・この主人公が今もどこかで『コンビニ人間』として生きているのだろうとおもえるし、そしてそれを祝福できる世の中が、とても生きやすいなあ、と感じる

・お話の中では「こちら」「あちら」とわけていたけど、そのどちらでもない中間層もあるよなあ、などと でもそれを描く作品ではないから、このお話はこれで完成されていると感じる

・上記の点により、書き方がエンタメ的だな、とはちょっとおもった(だから読みやすいというのもあるかな)

・おもしろかったです

・こういう人もいて、いろんな人がいて、世の中が回っているんですよ(こなみ)

・でもこのお話を持ってきて、発達障害のお話、と読むのはなんかちがうかなあ、と

・世の中と折り合いがつけられない人なんてたくさんいるわけで、その中のひとりをクローズアップした話、だとおもうし、こんな価値観があったっていい


2022/09/17

冒頭読書感想文・5 『あひる』今村夏子、『猛スピードで母は』長嶋有

 『あひる』今村夏子


前も思ったけど、モブの描写がうまいなあ、目に浮かぶよう

そして、すごくかわいらしいお話なんだけども、今村夏子さん、ご両親との確執ありそうだなあ、とおもってしまった(それくらい描写が真に迫っていて具体的ということで、そうだと確信しているわけではない。作品は作品、作者は作者) さらっと書いてあることが深いというか、どんな気持ちで書いているのかなあ、と考えてしまった

それはそれとしてのりたまのその後がとてもとても気になるので、いつか続き読みたい


『猛スピードで母は』長嶋有

これ、ふつーに続きが気になる

両親ともに毒親っぽいなあ 洋子さんが豪胆ながらいい人っぽいのが救い ハピエンかなあ、ハピエンだといいなあ

主人公はお姉ちゃんだとおもったけども、あらすじを見るとお兄ちゃんか

『母』とタイトルで呼ばれていうのは実母なのだろうか、洋子さんなのだろうか

全体的にありそうだなあ、と思うし、大人がたくさんいる中での子どもの肩身の狭さとか、ちょっと共感してしまったよ
これくらい『実録』感出して書けたらいいよね

いづれちゃんと読もう

2022/09/16

冒頭読書感想文・4 『くっすん大黒』、『きれぎれ』町田康

 『くっすん大黒』

おもしろかったw


 もう三日も飲んでいないのであって、実になんというかやれんよ。ホント。酒を飲ましやがらぬのだもの。ホイスキーやら焼酎やらでいいのだが。あきまへんの? あきまへんの? ほんまに? 一杯 だけ。 あきまへんの? ええわい。飲ましていらんわい。飲ますな。飲ますなよ。そのかわり、ええか、おれは一生、Wヤングのギャグを言い続けてやる。

町田 康 (2002-05-10). くっすん大黒 (文春文庫) (Kindle の位置No.31-34). 文藝春秋. Kindle 版. 


この冒頭はずるいw ずっとこの調子でまんまと読まされるw

いちおうシラフのはずだけども、全体的に空気感が酔っている でもシラフだから不愉快な描写とかはなくてぐいぐい読めた

そして主人公の、社会と少し距離が空いてしまったがゆえ(?)の調子外れながら愉快な思考回路がおもしろい シラフで酔ってる 酔ってたら、この複雑な思考はできない気がする シラフで酔ってる そんな言葉が合ってる、たぶん

これはいずれ紙媒体で買おうとおもう、ほしいw つづき気になるw


『きれぎれ』

これもホットスタートだなあ 一瞬精神世界でのお話なのかとおもったけども、続く冒頭部分ではまだわからない

お手本のようというか、今のわたしの不出来なところを自覚させてくれる作品だと感じました

圧倒的描写の不足もそうなのだけれど、お話のテンポについてもとても考えさせられた

たぶん学ぶべきことがたくさんつまっている本だとおもう

早めに読んだほうが良さそうだなあ、今月読めるかなあ





2022/09/12

冒頭読書感想文・3 『こちらあみ子』、『むらさきのスカートの女』今村夏子

『こちらあみ子』

純文を勉強するなら避けては通れぬ、ぜったいに読め、と言われた作品

冒頭描写美しいね これだけの行数割いて情景描写しちゃう純文だいすき

てっきり子どもが主人公だと思いこんでいたのだが、読んでいるとどうにも『あみ子』は大人ではなかろうか疑惑がでてきた

しかし小学生のさきちゃんと友だち付き合いしているあたり、これも生きづらい主人公のお話かなあ

『あみ子の馬鹿』という消えない傷が、相手が子どもであるだけに生々しくて純粋な悪意をぶつけられた感じで痛かった

あみ子の気持ちもそうだけど、ご親族はどう思ったかなあ、と考えてしまった
そんなことする子は出禁でいいとおもうけども、特定できんだろうしなあ

これも近々にちゃんと読みます


『むらさきのスカートの女』

おーもしろかった!!!

執拗なまでに『むらさきのスカートの女』を観察し、自分の人生ですれ違ったいろいろな人と『似ている』とすることに軽い嫌悪感を抱き始めたその瞬間に


 つまり、何が言いたいのかというと、わたしはもうずいぶん長いこと、むらさきのスカートの女と友達になりたいと思っ て いる。

今村 夏子 (2022-06-07). むらさきのスカートの女 (朝日文庫) (Kindle の位置No.153-154). 朝日新聞出版. Kindle 版. 


ときてひっくり返った なるほど心意気やよし、がんばれ!!!

しっかし、これはストーキングじゃないかw だめだろこれw

お試し読みがめちゃくちゃいいところで終わっているww つづきください、そのうち読みます!!!

それにしても今村夏子さんて人間描写が極上ね 体温があるというか、体臭があるというか、モブにすら形がある

そして、とても端整だとおもった
学んでいきたいなあ

冒頭読書感想文・2 『改良』、『破局』、『教育』遠野遥

『改良』

サンプルすくなっ(2ページ?)

これで感想はちょっとむずかしい

が、前振り評判によると着地点がいい、ぜったいに読め、今のわたしに必要とのことだったので、たぶん近々に読む


『破局』

おおー、ホットスタートですねえー、これは熱い
でもなんか、『改良』より無理してる? 感を覚えた

遠野遥さんはスポーツ描写がすきなのかしら
最初はバスケかな? とおもったけれど、アメフトかな? ラグビー?

途中でチワワ描写が挟まるあたり、すごく純文をかんじる(こなみ)

し、話の展開のさせかたと、冒頭に持たせる情報量がとても勉強になったし、たぶんもっと学べることがたくさんありそうなお話だとおもった

いつか続き読むけども、今ではない


『教育』

すみません……ノットフォーミーでした……


冒頭読書感想文・1 『コンビニ人間』村田沙耶香

読みたい本をすべて読めるわけではないので、Kindleのサンプル部分を読んで冒頭読書感想文を不定期で書いていきます

つづきが読みたくなった作品は最期まで読んで、そのうち別口で感想を書くとおもいます

初回はいろいろな人が推している、村田沙耶香さん著『コンビニ人間』いきます


 コンビニエンスストアは、音で満ちている。客が入ってくるチャイムの音に、 店内を流れる有線放送で新商品を宣伝するアイドルの声。店員の掛け声に、バーコードをスキャンする音。かごに物を入れる音、パンの袋が握られる音に、店内 を歩き回るヒールの音。全てが混ざり合い、「コンビニの音」になって、私の鼓膜にずっと触れている。

村田 沙耶香 (2018-09-04). コンビニ人間 (文春文庫) (Kindle の位置No.25-29). 文藝春秋. Kindle 版. 

 

わりとコンビニスキーなのでざああああっと目の前に光景が浮かぶようだった イメージは青いコンビニ

映像として見えるコンビニ描写のあとに


 コンビニ店員として生まれる前のことは、どこかおぼろげで、鮮明には思いだせない。

村田 沙耶香 (2018-09-04). コンビニ人間 (文春文庫) (Kindle の位置No.75-76). 文藝春秋. Kindle 版. 


ときて、純文なのに引きが強いってどういうことだ、訴えるぞ、とおもいました(こなみ)

この一文かなあ、これが起点となって書いたのかなあ
わかんないけど、わたしがこの一文思い浮かんだら、確実にドヤ顔で書きなぐったとおもう

淡々と子ども時代のことをなぞって行く過程で、主人公がいろいろつまづきがちな人生を歩んでいるんだろうな、と心配になるけども、本人がわりと平気そうに思えるのがなんとも……ASDかなあ……ASDだろうなあ……じゃないかなあ……

1998年に大学1年ということは、子どものころはそれを「治らなくては」と思ってしまうのは時代的にしかたがないよなあ、と……25年近く経った今でさえ、対処法が確立しているとは言い難いわけだし ご親族がとてもいい人たちなのが救いだけども、やはり『治る』ことを望んでいるのが現代人目線で痛々しかった


 今まで、誰も私に、「これが普通の表情で、声の出し方だよ」と教えてくれたことはなかった。

村田 沙耶香 (2018-09-04). コンビニ人間 (文春文庫) (Kindle の位置No.176-177). 文藝春秋. Kindle 版. 


うるっときた
ああ、よかったね、『生まれる』ことができたんだね、と

『普通』ってなんだろうね、わからないよ、難しいよ
教えてもらわなきゃわからんよね、普通とどう違うかなんてさ
昔の自分のこととか思い出してエモエモしかった

そして前振り評判で聞いていたよりもずっと読みやすくてすっと入ってくる文章だったし、華々しいことを書いているわけではないのに引きが強くて先が気になる

いいね、読みやすいと同時に心に残る文章
そういうのが書きたいね

これは今度続きを読もうとおもう

第58回文藝賞選評から(勝手に)読み取ったこと

 磯崎憲一郎さん『視点の発明、自走する小説』

・何かしらの新しい要素を小説に持ち込んでいる作品であれば、評価すべき

・開かれた可能性は小説が立ち上がっている証左(????)

・時間経過の描き方に工夫を、人物描写が一方的で平坦にならないように

・テーマと理屈で組み上げると小説として立ち上がらない(????)

・主義主張は共感されたとしても、小説としての面白さ、奥深さではない

・登場人物を魅力ある者として描くのであれば、属性やその美しさの需給バランス、それらの数的優位状態を描くだけでは不十分

・体言止めなどの特殊な文体を用いるのであれば、効果的に

・登場人物の描き方を類型的なものにしないように

・日本語として正しいかをちゃんと調べよう


島本理生さん『「書ける」ことの先へ』

・『余分な辻褄合わせ』は読み手の邪魔をする

・場面の必然性の実感が欲しい

・ラストの先の時間的な広がりと景色が見えて欲しい

・『小説として』読むのであれば、俯瞰した視点や、関係性の繊細な揺らぎなどの描写が欲しい

・「一応は決着をつけさせるべきだ」という生真面目で、ラストを書かないで


穂村弘さん『あり得ない現実の引力』

(受賞作『眼球達磨式』の要約のみ)


村田沙耶香さん『眼差しと言葉に宿るもの』

・(話進行に便利な)登場人物に頼らないで、主人公をもっと明確に存在させてほしい

・思考描写は随筆に近い感覚を読み手に与える言葉選びで、主人公及びその作品だけの言葉、という段階まで熟成しているべき

・そこまで達していないのであれば、映像的な印象や肉体感覚など、他の良い描写の妨げになりうる

・たくさんの人間たちがそれぞれの思惑で動き回っているだけで、それをうまく作品の中に発生できないなら、『作品世界が熟していない』作品と感じる

・多様であるはずの人物の言葉が似ると、生々しさが宿らない

・その小説だけの場面、描写、視線などが読みたい

・「その小説からしか見えない世界」「その小説独特の、細部の言葉の面白さ」がある作品は強い

・小説の言葉は、たとえシンプルな文章であっても句読点ひとつが磨かれて光っているような、そういう魅力があってほしい


雑感

・小説、ムズカシイネ!

・磯崎先生の「小説が立ち上がる」という表現、だいすきなのだけど、いまいちまだつかめない
理解できたときには「ウォーター!!!!」みたいな感動があると思うし、はやく理解したいし、わたしも使ってみたい、「小説が立ち上がる」!

・ラストは、やっぱりエンタメちっくにやってはだめ、覚えた

・オリジナリティ、ってことばだと途端に陳腐に聞こえるけども、求められているのはそういうことで、そのやり方も示唆してくれているとても親切な選評でした

・村田沙耶香さん、今回で選考委員終わっちゃうん???? えー、続けてほしいなあ

・前も思ったけど、選評全体がもう、これエンタメ小説よね おもしろかった!!!

2022/09/09

第117回文學界新人賞選評から(勝手に)読み取ったこと

 角田光代さん

・「小説はこうあるべき」という規定を破ろう

・描写や登場人物は、そこに出てくる意味があるべき

・頭の中でていねいに作り込まれた作品より、「今これを書かなければ、自分はどうにかなってしまう」というようなテーマで書いてほしい

・お話をきれいにまとめるための登場人物はいらないし、「小説はこうあるべき」という枠に収めようとしないでほしい


吉田修一さん

・読み手になにかの感触を残そう

・描写が巧みであるほど、そうではないところの稚拙さが際立ってしまう

・文学においてすべてを相対化してしまうのはよろしくはない、が、新人賞では青臭い絶対的価値観のものが多い


松浦理英子さん

・小説の形にただ落とし込んだ作品にするのではなく、理屈を超えて読者に迫る域を目指してくれ

・肉体労働の描写は「頭ではなく手で書く」

・登場人物に語らせるなら、それを描ききってほしい

・お話の長さでふさわしい(描ききれる)人数を考えよう

・文学には溺れても、題材には溺れるな

・ほんとうに面白い小説が書けるのは、文学主義を維持しつつも文学のある部分には抵抗し批判的になってから


松浦寿輝さん

・描写するならその意味があるべき

・「本当らしさ」を逸脱しないで

・視点移動はとりとめのない乱雑さになりがち


花村萬月さん

・なにも描かないことに対する無意識の不安を克服してほしい

・抽象言語を使いすぎると読み手の心を掴み損ねる

・辞書を引け

・小説という散文にオチはいらない、無理に落とすくらいならふくみをもたせろ

・文学なんていうありもしない形式にこだわるな

・簡単に表現できることを難しくしてしまわないように

・舞台となる土地と登場人物の乖離に気をつけよう


雑感

・この回の作品ぜんぶ読んでみたいなあ、とくに『アフリカ鯰』

・ある選評者が「それなんてエロビ? もっと書けただろ」と言ったところを他の選評者が「めっちゃ迫力あってすごかったわー」て言っててウケた

・たくさんの目に読んでもらえることのありがたさよ

・書こうとしているテーマが作者自身の芯のものではなく上っ面のもので、技工だけでどうこうしようとしたらしい作品が、全員からそこつっこまれてるのすごい さすが

・オチがつっこまれてるなあ、と へんなオチつけるくらいなら落とすな、と やはりここがエンタメとの大きな違いか

・選評者ぜんいんの声を聴いて、それで扱われた作品の内容がしだいに把握できていくの、これもう選評自体がエンタメ小説じゃん、とおもった
おもしろかった、ミステリーっぽくて

・平易な言葉回しはどこでも推奨されているなあ、という印象

・視点移動はよっぽど巧くやらないかぎり、純文では避けた方がいいかもね ましてそれで話が展開するなら

・勉強になりました 花村萬月せんせいのmixiコミュ入るためだけにアカウント取得しそうになった


2022/09/08

エンタメと純文の違い【随時追記】

 自分なりに理解したことをつらつらと


・エンタメは、ページをめくりたくなる 純文は、立ち止まって考えたくなる

・エンタメは、エピローグがある 純文は終わってないけど終わってる

・エンタメのオチは、ちゃんと落ちている 純文のオチは、かならずしも落ちてはいない

・エンタメは基本、わくわくする 純文は基本、じりじりする

・エンタメの葛藤には、展望がある 純文の葛藤は、五里霧中

・エンタメは、常におもしろいと期待させる 純文は、常におもしろい必要はない

・エンタメの問題は、解決される 純文の問題は、かならずしも解決はされない

・エンタメも純文も、冒頭はしっかりね!!!!

・エンタメ冒頭しっかりは、引きが強いこと 純文冒頭しっかりは、読者をうならせること

・エンタメの描写は、テンポ重視で 純文の描写は、細密に

・でも、エンタメも純分も、要らない描写は要らないよ!!!!

・にいさん、エンタメ書くならさ、ちゃんと読者を意識しなよ

・にいさん、純文書くならさ、ちゃんと自分と向き合いなよ



Hello world.

あとで見返す用にログがほしくなった

ので、書いていきます