2022/09/12

第58回文藝賞選評から(勝手に)読み取ったこと

 磯崎憲一郎さん『視点の発明、自走する小説』

・何かしらの新しい要素を小説に持ち込んでいる作品であれば、評価すべき

・開かれた可能性は小説が立ち上がっている証左(????)

・時間経過の描き方に工夫を、人物描写が一方的で平坦にならないように

・テーマと理屈で組み上げると小説として立ち上がらない(????)

・主義主張は共感されたとしても、小説としての面白さ、奥深さではない

・登場人物を魅力ある者として描くのであれば、属性やその美しさの需給バランス、それらの数的優位状態を描くだけでは不十分

・体言止めなどの特殊な文体を用いるのであれば、効果的に

・登場人物の描き方を類型的なものにしないように

・日本語として正しいかをちゃんと調べよう


島本理生さん『「書ける」ことの先へ』

・『余分な辻褄合わせ』は読み手の邪魔をする

・場面の必然性の実感が欲しい

・ラストの先の時間的な広がりと景色が見えて欲しい

・『小説として』読むのであれば、俯瞰した視点や、関係性の繊細な揺らぎなどの描写が欲しい

・「一応は決着をつけさせるべきだ」という生真面目で、ラストを書かないで


穂村弘さん『あり得ない現実の引力』

(受賞作『眼球達磨式』の要約のみ)


村田沙耶香さん『眼差しと言葉に宿るもの』

・(話進行に便利な)登場人物に頼らないで、主人公をもっと明確に存在させてほしい

・思考描写は随筆に近い感覚を読み手に与える言葉選びで、主人公及びその作品だけの言葉、という段階まで熟成しているべき

・そこまで達していないのであれば、映像的な印象や肉体感覚など、他の良い描写の妨げになりうる

・たくさんの人間たちがそれぞれの思惑で動き回っているだけで、それをうまく作品の中に発生できないなら、『作品世界が熟していない』作品と感じる

・多様であるはずの人物の言葉が似ると、生々しさが宿らない

・その小説だけの場面、描写、視線などが読みたい

・「その小説からしか見えない世界」「その小説独特の、細部の言葉の面白さ」がある作品は強い

・小説の言葉は、たとえシンプルな文章であっても句読点ひとつが磨かれて光っているような、そういう魅力があってほしい


雑感

・小説、ムズカシイネ!

・磯崎先生の「小説が立ち上がる」という表現、だいすきなのだけど、いまいちまだつかめない
理解できたときには「ウォーター!!!!」みたいな感動があると思うし、はやく理解したいし、わたしも使ってみたい、「小説が立ち上がる」!

・ラストは、やっぱりエンタメちっくにやってはだめ、覚えた

・オリジナリティ、ってことばだと途端に陳腐に聞こえるけども、求められているのはそういうことで、そのやり方も示唆してくれているとても親切な選評でした

・村田沙耶香さん、今回で選考委員終わっちゃうん???? えー、続けてほしいなあ

・前も思ったけど、選評全体がもう、これエンタメ小説よね おもしろかった!!!

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