2022/09/09

第117回文學界新人賞選評から(勝手に)読み取ったこと

 角田光代さん

・「小説はこうあるべき」という規定を破ろう

・描写や登場人物は、そこに出てくる意味があるべき

・頭の中でていねいに作り込まれた作品より、「今これを書かなければ、自分はどうにかなってしまう」というようなテーマで書いてほしい

・お話をきれいにまとめるための登場人物はいらないし、「小説はこうあるべき」という枠に収めようとしないでほしい


吉田修一さん

・読み手になにかの感触を残そう

・描写が巧みであるほど、そうではないところの稚拙さが際立ってしまう

・文学においてすべてを相対化してしまうのはよろしくはない、が、新人賞では青臭い絶対的価値観のものが多い


松浦理英子さん

・小説の形にただ落とし込んだ作品にするのではなく、理屈を超えて読者に迫る域を目指してくれ

・肉体労働の描写は「頭ではなく手で書く」

・登場人物に語らせるなら、それを描ききってほしい

・お話の長さでふさわしい(描ききれる)人数を考えよう

・文学には溺れても、題材には溺れるな

・ほんとうに面白い小説が書けるのは、文学主義を維持しつつも文学のある部分には抵抗し批判的になってから


松浦寿輝さん

・描写するならその意味があるべき

・「本当らしさ」を逸脱しないで

・視点移動はとりとめのない乱雑さになりがち


花村萬月さん

・なにも描かないことに対する無意識の不安を克服してほしい

・抽象言語を使いすぎると読み手の心を掴み損ねる

・辞書を引け

・小説という散文にオチはいらない、無理に落とすくらいならふくみをもたせろ

・文学なんていうありもしない形式にこだわるな

・簡単に表現できることを難しくしてしまわないように

・舞台となる土地と登場人物の乖離に気をつけよう


雑感

・この回の作品ぜんぶ読んでみたいなあ、とくに『アフリカ鯰』

・ある選評者が「それなんてエロビ? もっと書けただろ」と言ったところを他の選評者が「めっちゃ迫力あってすごかったわー」て言っててウケた

・たくさんの目に読んでもらえることのありがたさよ

・書こうとしているテーマが作者自身の芯のものではなく上っ面のもので、技工だけでどうこうしようとしたらしい作品が、全員からそこつっこまれてるのすごい さすが

・オチがつっこまれてるなあ、と へんなオチつけるくらいなら落とすな、と やはりここがエンタメとの大きな違いか

・選評者ぜんいんの声を聴いて、それで扱われた作品の内容がしだいに把握できていくの、これもう選評自体がエンタメ小説じゃん、とおもった
おもしろかった、ミステリーっぽくて

・平易な言葉回しはどこでも推奨されているなあ、という印象

・視点移動はよっぽど巧くやらないかぎり、純文では避けた方がいいかもね ましてそれで話が展開するなら

・勉強になりました 花村萬月せんせいのmixiコミュ入るためだけにアカウント取得しそうになった


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